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フロンティアセンター・岩佐和晃教授らの研究グループ コバルト酸化物でスピンの量子重ね合わせ状態を創出

茨城大学フロンティア応用原子科学研究センターの岩佐和晃教授と東北大学等の研究者からなる共同研究チームは、低温で磁石としての性質を示さないことで知られるコバルト酸化物LaCoO3のCoをScで化学置換した新たな物質LaCo1-yScyO3において、元のLaCoO3とは磁気・電気・熱的性質の全く異なる絶縁状態が現れることを発見しました。

また、X線回折・中性子分光実験の結果、この絶縁状態が、電子スピンの総和が異なる2種類の原子状態(低スピンと高スピン)の量子力学的な重ね合わせにより現れるという、これまでに例のない発現機構を突き止めました。この成果は、励起子絶縁と呼ばれる歴史的に観測例の少ない量子力学的な凝縮状態の糸口をつかんだものとして、その実現だけでなく、将来的な新規量子コンピュータ素子への発展が期待されます。本研究の成果は、2018年10月7日(中央ヨーロッパ時間)、ドイツの国際科学論文誌Advanced Quantum Technologiesに掲載され、実験データが表紙を飾りました。

同賞は、測定技術開発、装置開発において優れた成果を示したポスター発表に対して贈られるものです。受賞対象の年齢制限がない中、博士前期課程の学生である上地さんの受賞はまさに快挙といえます。

くわしくはプレスリリースをご覧ください。
→【プレスリリース】コバルト酸化物でスピンの量子重ね合わせ状態を創出〜量子演算素子の基礎となる励起子絶縁状態の実現へ〜

今後の展望

今回の成果により、物質材料科学において手頃な元素置換法や常圧・無磁場という環境のみで、電子スピン状態の量子重ね合わせの創出を可能にするという突破口が拓かれました。この量子重ね合わせは、実現例のなかったスピン型の励起子絶縁状態である可能性が高く、その特性評価や機構解明の基礎研究が実験・理論共に一挙に進むと期待されます。また、応用面からは、励起子絶縁状態は電気を流さない省エネ型量子コンピュータのベースになると期待され、加えて、スピン状態の可変性は安価で豊富な鉄元素にも発現する特性であるため、その新たな応用研究の加速が期待されます。

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(2018.12.14)